最近、「岡崎市は税金が高い」という投稿をよく見かけます。
正直に言うと、私はこれに言及できていませんでした。岡崎の数字は頭に入っていても、隣の刈谷や幸田がいくらなのかを知らなかったからです。
知らないまま「そんなことないですよ」と言うのだけは、やってはいけないと思っています。
なので、まず10団体の市税条例を一つずつ確認するところから始めました。
「岡崎って、隣の市より負担が重いのかな」 そう思ったことのある方に読んでほしい記事です。
先に結論から書きます
調べた範囲では、岡崎市の負担が西三河で一貫して最も高い、という事実は確認できませんでした。
ただ、これで「岡崎は安いです」と言うつもりもありません。
一律に高いわけではない。ただし、世帯や資産の条件によっては重くなる
これが今回の着地点です。
なぜ調べようと思ったか
「高い」と言われても、比べる相手を知らなければ判断できません。
私も同じでした。感覚で言い返すことはできても、それは根拠になりません。
元々Webの仕事で数字を扱ってきたので、条件を揃えないまま高い安いを語るのは、どうにも気持ちが悪いんです。
だから他人の要約ではなく、条例の本文と公表資料を直接読むことにしました。
どうやって調べたか
比較したのは西三河9市1町。岡崎、碧南、刈谷、豊田、安城、西尾、知立、高浜、みよし、そして額田郡幸田町です。
項目は4つ。市税4本の税率、国民健康保険、介護保険料、市民1人あたりの市税額。
市税は、各団体の条例そのものを開きました。都市計画税だけ別条例になっている市もあって、探すだけで時間を持っていかれます。
国保は各団体公式サイトの令和8年度ページ(豊田市だけ条例本文)。介護保険料と決算・人口は、愛知県と総務省の公表資料を使いました。
基準時点は、市税と国保が令和8年度、介護保険料が第9期(令和6年度から令和8年度)、1人あたり市税額が令和6年度決算です。
① 市税の税率は、ほぼ横並びでした
まず市税4本。個人市民税、法人市民税、固定資産税、都市計画税です。
個人市民税・法人市民税・固定資産税には地方税法の標準税率が定められているので、ここは横並びだろうと予想していました。
実際そのとおりでしたが、1団体だけ例外がありました。
| 団体 | 個人市民税 所得割 | 法人市民税 法人税割 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|---|---|
| 岡崎市 | 6.0% | 6.0% | 1.4% | 0.3% |
| 碧南市 | 6.0% | 6.0% | 1.4% | 0.25% |
| 刈谷市 | 6.0% | 6.0% | 1.4% | 0.3% |
| 豊田市 | 6.0% | 6.0% | 1.4% | 0.25% |
| 安城市 | 6.0% | 6.0% | 1.4% | 0.3% |
| 西尾市 | 6.0% | 6.0% | 1.4% | 0.28% |
| 知立市 | 6.0% | 6.0% ※ | 1.4% | 0.3% |
| 高浜市 | 6.0% | 6.0% | 1.4% | 0.3% |
| みよし市 | 6.0% | 6.0% | 1.4% | 0.3% |
| 幸田町 | 6.0% | 6.0% | 1.4% | 0.2% |
個人市民税の均等割は、10団体とも年額3,000円です。法人市民税の均等割は、資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の法人で年額50,000円でした。
個人市民税、法人市民税の基本税率、固定資産税は、10団体でほぼ横並びです。
一方、都市計画税には違いがあります。岡崎市は法律上の上限である0.3%ですが、同じ0.3%を採用しているのは10団体中6団体。岡崎市だけが特別に高いわけではありませんが、豊田市の0.25%や幸田町の0.2%と比べれば高い側です。
なお、都市計画税には標準税率(基準となる率)の定めがありません。地方税法が定めているのは制限税率、つまり上限0.3%だけです。
※知立市は、資本金等1億円超かつ法人税額1,000万円超の法人に、法人市民税の超過税率8.4%を適用しています。それ以外の法人は6.0%です。個人市民税の均等割3,000円には、県民税や国税である森林環境税は含みません
② 国民健康保険は、10団体中7番目
ここが一番手間のかかったところです。国保は算定の仕組みが複雑で、条件を決めないと比較になりません。
試算の条件
・被保険者3人の世帯。3人とも18歳以上 ・うち2人が40歳から64歳 ・世帯の算定基礎額(基礎控除後の総所得金額等)は250万円 ・算定基礎額の全額を40歳から64歳の2人の所得として計算 ・低所得世帯の軽減措置は適用しない
| 順位 | 団体 | 合計(年額) | 岡崎市との差 |
|---|---|---|---|
| 1 | 碧南市 | 550,400円 | +50,770円 |
| 2 | 刈谷市 | 542,150円 | +42,520円 |
| 3 | 安城市 | 519,100円 | +19,470円 |
| 4 | 知立市 | 514,050円 | +14,420円 |
| 5 | 西尾市 | 510,300円 | +10,670円 |
| 6 | みよし市 | 501,000円 | +1,370円 |
| 7 | 岡崎市 | 499,630円 | — |
| 8 | 高浜市 | 496,350円 | -3,280円 |
| 9 | 豊田市 | 476,131円 | -23,499円 |
| 10 | 幸田町 | 466,619円 | -33,011円 |
そもそも、この「7番目」は何の順位?
言葉を整理します。
この順位は、同じ条件の世帯が1年間に払う保険料の高い順です。1番が最も高く、10番が最も安い。
岡崎は7番目。つまり高いほうから7番目、安いほうから4番目という位置です。
金額でいうと年499,630円。10団体の単純平均507,573円を7,943円下回ります。
内訳は、医療分・後期高齢者支援金分・介護納付金分・子ども子育て支援分の4つを合計した額です。
最高の碧南市と最低の幸田町の差は83,781円。同じ西三河でも、これだけ開きます。
ただし、これは実在する誰かの保険料ではありません。10団体を同じ土俵に乗せるため、条件を固定して計算した「モデル世帯」の金額です。
国保は団体ごとに率も額もバラバラで、世帯の人数・所得・年齢で結果が変わります。条件を1つに揃えないと、そもそも比較になりません。
なので7番目は「この条件ならこうなる」という1点の目安です。ご自身の保険料の順位ではない、という前提で読んでください。
ここは岡崎が最も高い
都合のいい数字だけ並べても意味がないので、はっきり書きます。
岡崎の国保は、平等割が10団体で最も高い設計です。平等割とは、1世帯あたり一律にかかる額のこと。
・医療分の平等割:30,340円 2位の高浜市23,000円より7,340円高い
・後期高齢者支援金分の平等割:10,600円 2位の刈谷市・西尾市・知立市7,800円より2,800円高い
ここを見つけたときは、正直きつい数字だと思いました。
平等割は世帯単位でかかります。世帯の算定基礎額など他の条件が同じなら、加入者が多い世帯では平等割の1人あたり負担が薄まり、加入者が少ない世帯では重くなります。これが岡崎市の国保料の特徴です。
先ほどの試算で岡崎が7位だったのは、3人世帯で計算しているからという面もあります。単身世帯では平等割の影響が相対的に大きくなるため、このモデルより順位が上がる可能性があります。
一方、1人あたりにかかる均等割は、医療分29,830円で10団体中8番目。介護納付金分の均等割10,530円は、10団体で最も低い額でした。
※令和8年度は、10団体とも所得割・均等割・平等割の3方式で、資産割は採用していません。岡崎市のみ保険料方式で、他の9団体は保険税方式です
子ども分は10団体で最も低い
令和8年度から、10団体すべてで「子ども・子育て支援納付金分」が新設されました。
18歳未満の加入者については均等割が全額軽減され、18歳以上の加入者が均等割の対象になります。
岡崎は所得割0.23%、18歳以上1人あたり均等割1,040円。どちらも10団体で最も低い水準でした。
③ 介護保険料は、10団体中5番目
65歳以上の方が納める第1号被保険者の基準額です。第9期(令和6年度から令和8年度)の数字を見ます。
| 順位 | 団体 | 基準額(月額) |
|---|---|---|
| 1 | 高浜市 | 5,990円 |
| 2 | 刈谷市 | 5,900円 |
| 3 | 幸田町 | 5,800円 |
| 4 | 知立市 | 5,760円 |
| 5 | 岡崎市 | 5,700円 |
| 6 | 碧南市 | 5,600円 |
| 7 | 豊田市 | 5,300円 |
| 7 | 西尾市 | 5,300円 |
| 9 | 安城市 | 5,200円 |
| 10 | みよし市 | 4,900円 |
10団体の単純平均は月額5,545円。岡崎はこれを月155円上回ります。
最高の高浜市より290円低く、最低のみよし市より800円高い。全体の幅は1,090円です。
位置としては中位。
④ 「1人あたり市税額」には落とし穴があります
最後に、SNSでよく引用される数字に触れておきます。
| 順位 | 団体 | 1人あたり市税額 |
|---|---|---|
| 1 | 豊田市 | 354,724円 |
| 2 | みよし市 | 303,404円 |
| 3 | 碧南市 | 272,950円 |
| 4 | 刈谷市 | 260,493円 |
| 5 | 安城市 | 222,326円 |
| 6 | 幸田町 | 218,916円 |
| 7 | 高浜市 | 215,856円 |
| 8 | 西尾市 | 188,110円 |
| 9 | 岡崎市 | 186,242円 |
| 10 | 知立市 | 177,102円 |
そもそも「1人あたり市税額」とは何か
計算式は単純です。
その市が1年間に集めた市税の総額 ÷ 住んでいる人の数
分子は令和6年度決算の地方税。市民税、固定資産税、都市計画税、軽自動車税、市町村たばこ税などの合計です。
分母は、令和7年1月1日現在の愛知県推計人口。
岡崎でいえば、市税709億円を人口38.1万人で割って、1人あたり186,242円という計算になります。
順位が上だと、何がいいのか
ここが誤解の分かれ目です。
順位が上(1人あたりの額が大きい)というのは、市民1人あたりで見たときに市の財布へ入るお金が多い、という意味です。
その金額を、市民一人一人が実際に納めているという意味ではありません。
税率は10団体でほぼ同じです。差が生まれるのは、税率ではなく、住民の所得、企業の収益、土地・家屋・償却資産といった、その地域が持つ税源の規模と構成によるものです。
※税収総額を人口で割った指標なので、人口だけでなく、法人市民税や固定資産税などの税源構成にも大きく左右されます
この数字を負担の証拠には使えません
岡崎は9番目。ここだけ切り取れば、いくらでも都合よく使えてしまいます。
でもこの数字は、負担の重さを測る指標にはなりません。
理由は単純で、税率が10団体でほぼ同じだからです。
豊田市354,724円と知立市177,102円の2倍の開き。これは税率の差ではありません。
豊田市自身も「法人市民税が前年度より増加したため、市税決算額は約300億円増の1,467億6,637万円となりました」と説明しています。1年で約300億円動く数字です。
岡崎市の市税決算額は約709億円で、10団体中2番目。人口も約38.1万人で2番目です。
それでも市税収入を人口で割ると1人あたり約18.6万円となり、9位になります。つまり市税総額の規模は大きいものの、人口1人あたりで見た税源の厚みは、企業集積の強い自治体などより小さいということです。
この指標が表しているのは、市民個人の負担額ではなく、人口規模に対して地域にどれだけ市税の税源があるかです。
※企業業績への依存度を判断するには、法人市民税などの税目別内訳を別途見る必要があります
私の受け止め
数字を比較すると、岡崎市がすべての項目で突出して高いわけではありませんでした。
ただ、「実感として重い」と感じている方の感覚が間違っているとは思いません。
単身世帯や2人世帯の方は、国保の平等割が10団体で最も高い設計をまともに受けます。
市街化区域に土地や家屋をお持ちの方は、都市計画税0.3%の影響を毎年受け続けます。
一律に高いわけではなくても、条件によっては岡崎のほうが重い。これが正直な結論です。
平等割と均等割のバランスをどう設計するかは、市が判断できる部分。ここは今後も議会で数字を追います。
今の段階で「下げます」と言えるだけの材料は持っていないので、安請け合いはしません。
この記事で調べていないこと
信頼していただくために、調べきれていないことも書いておきます。
・令和7年度決算は使っていません。 国と県の市町村別横断集計が未公表のためです(県版の公表は例年10月ごろ)
・国保と介護保険料は、豊田市の国保を除いて条例本文までは確認できていません。 各団体公式サイトの令和8年度ページが根拠です
・ただし介護保険料は、愛知県公表の第9期基準額一覧と10団体すべて一致することを確認しました
・知立市の国保ページは、本文が令和8年度となっている一方で更新日表示が古いまま。 所管課への確認が必要です
・10団体すべてについて、統一条件による税目別内訳の比較までは行っていません。 なお豊田市については、市公式資料により法人市民税の増加を確認しています
・比較したのは市税・国民健康保険・介護保険料の3分野だけ。上下水道料金、保育料、その他の使用料・手数料は見ていません
なので「岡崎の負担は全体として軽い」とは言えません。言えるのは、この3分野の範囲でどうだったか、それだけです。
よくある質問
Q:では、岡崎市で「高い」のはどこですか?
A:国民健康保険の平等割です。医療分30,340円、後期高齢者支援金分10,600円。どちらも10団体で最も高い額でした。都市計画税0.3%も、地方税法の上限と同じ率です。
Q:私の世帯でも7番目になりますか?
A:なるとは限りません。あの試算は1つの条件での計算です。特に単身世帯は平等割の影響が相対的に大きくなるため、このモデルより順位が上がる可能性があります。
Q:水道料金や保育料は比べていないのですか?
A:比べていません。今回は市税・国民健康保険・介護保険料の3分野だけです。
最後に
この記事を書いた理由は、誰かに反論するためではありません。
私自身が「本当に高いのか」を知らなかったからです。
数字を並べてみて分かったのは、「高い・安い」の一言では言えないということでした。項目によって位置が違い、世帯の条件でも変わる。
出典はすべて下に載せています。ご自身で確かめられる形にしました。
そのうえで、誤りがあればご指摘ください。訂正して更新します。
出典
市税(条例本文で確認)
- 岡崎市市税条例 https://www1.g-reiki.net/okazaki/reiki_honbun/i504RG00000211.html
- 刈谷市税条例/刈谷市都市計画税条例 https://en3-jg.d1-law.com/kariya/reikishu/H325901010008/H325901010008_j.html
- 豊田市都市計画税条例 https://www2.city.toyota.aichi.jp/reiki_int/reiki_honbun/i513RG00000166.html
- 高浜市税条例 https://www1.g-reiki.net/takahama/reiki_honbun/i529RG00000207.html
- みよし市税条例 https://www1.g-reiki.net/aichi-miyoshi/reiki_honbun/i569RG00000166.html
- 幸田町税条例 https://www1.g-reiki.net/kota/reiki_honbun/i567RG00000143.html
- 知立市税条例 https://en3-jg.d1-law.com/chiryu/d1w_reiki/H345901010053/H345901010053.html
- 知立市「法人市民税超過課税」 https://www.city.chiryu.aichi.jp/kurashi/zei/4/1608512847774.html
- 碧南市・安城市・西尾市の市税条例は各市例規集(D1-Law)
国民健康保険(各団体公式サイトの令和8年度ページ)
- 岡崎市 https://www.city.okazaki.lg.jp/kenko/kokuho/1002064/1002065.html
- 碧南市 https://www.city.hekinan.lg.jp/soshiki/fukushi/kokuho/kokuho/kokuhozei/8268.html
- 刈谷市 https://www.city.kariya.lg.jp/kurashi/hokennenkin/kokuho/1006952/1003238.html
- 豊田市国民健康保険税条例 https://www2.city.toyota.aichi.jp/reiki_int/reiki_honbun/i513RG00000383.html
- 安城市 https://www.city.anjo.aichi.jp/kurasu/hokennenkin/kokuho/kokuhokazeikeisan.html
- 西尾市 https://www.city.nishio.aichi.jp/kurashi/hoken/1001423/1002162.html
- 知立市 https://www.city.chiryu.aichi.jp/soshiki/hokenkenko/kokuhoiryo/gyomu/2/hokenzei/1445358723092.html
- 高浜市 https://www.city.takahama.lg.jp/soshiki/shimin/2469.html
- みよし市 https://www.city.aichi-miyoshi.lg.jp/soshiki/fukushi/hoken/3/6/336.html
- 幸田町 https://www.town.kota.lg.jp/soshiki/9/454.html
介護保険料
- 愛知県「第9期 第1号被保険者の介護保険料(基準額)一覧」 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/527288.pdf
市税決算額・人口
- 愛知県「2024年度市町村普通会計決算の概要」第6表 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/585168.pdf
- 愛知県「あいちの人口(2025年1月1日現在)」第1表 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/590938.pdf
- 総務省「令和6年度市町村決算カード」 https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/card-25.html
- 豊田市「令和6年度 決算値で見る財政状況の推移」 https://www.city.toyota.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/777/r06.pdf



