岡崎市内の川で、外国人グループが体や髪をシャンプーで洗っていて、水面が泡だらけになった。
市役所に通報したらなぜかこっちが叱られた。
そんな投稿がSNSで大きく広がっています。注意しても一時的にやめるだけで、また続けられた。市役所に相談したら「川は自由に使えるので何もできない」と言われた。そういう内容です。
ただ、投稿に書かれていることを、自分は一次情報として確認できていません。
本当に外国の方だったのか。市の職員が本当にその言い方をしたのか。どれも裏が取れていません。
SNSの投稿は、書いた人が見た範囲の一場面です。悪意があるという話ではなく、どんな人が書いても、書ける範囲は限られます。
なので今日は、「これが事実だ」という前提では書きません。
“”仮にこういうことがあったとすれば、その背景にはどういう仕組みがあるのか。””その構造だけを整理します。
犯人探しではなく、次に同じことで困った人が動けるようにするのが目的です。
→ 要点:以下は事実認定ではなく、「もしそうなら、こういう構造」という解説です。
今日は感情論ではなく、川って誰が管理しているのかという仕組みの話を整理します。そのうえで、最後に自分から一つお願いがあります。
まず前提として、岡崎の川はほとんどが「市の管理」ではありません
ここが今回、いちばん誤解されている部分です。
(とはいえ、市民からしたら関係ないと思います。)
日本の川は、河川法という法律で格付けされています。そして格付けごとに管理者が違います。
岡崎市の公式サイトに、はっきり書かれています。
| 川 | 管理者 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 矢作川 | 国土交通省 豊橋河川事務所 矢作川出張所 | 0564-22-1564 |
| 乙川・伊賀川・男川ほか19河川 | 愛知県 西三河建設事務所 | 0564-27-2758 |
| 準用河川・普通河川・水路 | 岡崎市 河川課 | 0564-23-6899 |
県管理の19河川には、鹿乗川、広田川、安藤川、占部川、砂川、乙川、伊賀川、山綱川、竜泉寺川、鉢地川、男川、夏山川、鳥川、乙女川、雨山川、青木川、真福寺川、巴川、群界川が入っています。
つまり、岡崎市民が「川」と聞いて思い浮かべる川は、ほぼ全部が市の管理ではありません。
※出典:岡崎市公式サイト「河川・砂防に関するお問い合わせ先」https://www.city.okazaki.lg.jp/shisei/machi/1003096/1003104.html[/note]→ 要点:矢作川は国、主要な川は愛知県。市が持っているのは小さな水路系だけです。
「川は自由に使えます」の、省略された後半
窓口で言われたという「川は自由に使える」。これは行政用語で自由使用と呼ばれる考え方です。
河川法は、取水や工作物の設置など特定の行為に許可制をかけています。逆に言えば、散歩や水遊びのような一般的な利用は、許可なくできる。それが自由使用です。
ただし、国土交通省の検討会の提言には、こう書かれています。
河川では、公共の利益や他人の活動を妨げない限りにおいて、自由に使用できることが原則である
大事なのは「公共の利益や他人の活動を妨げない限り」という後半です。
自由使用は「入るのが自由」という意味であって、「何をしてもいい」という意味ではありません。
窓口でこの後半が省かれて伝わったことが、今回の一番の火種だと思っています。
→ 要点:「自由に使える」は入場が自由という話。何をしてもいいという話ではありません。
川に洗剤を流す行為は、法律に触れる可能性があります
「じゃあ本当に何もできないのか」と言われると、そんなことはありません。
河川法第29条は、河川の「清潔」について支障をおよぼすおそれのある行為を、政令で禁止できると定めています。
それを受けた河川法施行令第16条の4が禁じているのが、これです。
河川区域内の土地にごみ、ふん尿、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を捨て、又は放置すること
罰則は3か月以下の拘禁刑、または20万円以下の罰金です。
容器やごみを置いていけば、これは明確に該当します。さらに悪質なら廃棄物処理法で5年以下の拘禁刑、1,000万円以下の罰金という重い規定もあります。
一方で、液体の洗剤を流す行為が「捨てる」に当たるかどうかは、解釈の余地があります。だからこそ、市民が独断で判断するのではなく、河川管理者に通報して判断してもらうのが確実です。
なお、よく名前が挙がる水質汚濁防止法は、今回は使えません。あの法律は工場や事業場の「特定施設」が対象で、個人の行為は規制の対象外です。
※出典:国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課「ごみのない水辺を目指して」ほか
→ 要点:使える法律はあります。ただし正しい法律名で、正しい窓口に届けることが前提です。
岡崎の川は、岡崎の水道の上流にあります
これは「気持ちの問題」で終わる話ではありません。
岡崎市の浄水場は、市内の川から水を取っています。
・男川浄水場 → 乙川
・仁木浄水場 → 矢作川の伏流水、羽布ダムの巴川
・額田南部浄水場 → 男川
・宮崎浄水場 → 男川、西牧原沢
加えて、矢作川を原水とする県企業庁の水道水を受けて供給している地域もあります。
つまり岡崎の川は、岡崎の蛇口の上流です。魚の話でもあり、子どもが遊ぶ場所の話でもあり、自分たちの飲み水の話でもあります。
※出典:岡崎市ヘルプポータル「水道水の水源(原水)はどこですか。」
→ 要点:川の汚れは、まわりまわって自分の家の蛇口に戻ってきます。
「外国の方だけに言うのは平等じゃない」への違和感
投稿の中で、いちばん引っかかったのがここでした。
投稿した方は「外国人だから」注意したわけではありません。川で洗剤を使っていたから注意した。行為に対して言っています。
だとすれば、行政の答え方はこうあるべきだったと思います。
・✕「外国の方だけに言うのは平等じゃない」=注意しない理由に使ってしまった
・◯「国籍を問わず、川で洗剤を使う行為は控えていただくよう周知します」=同じことを誰にでも言う
平等とは「誰にも言わない」ことではなく、「誰にでも同じことを言う」ことです
日本人がやっていても同じです。ここを取り違えると、ルールを守っている人がいちばん損をします。
なお、SNSのコメント欄では特定の国の名前が出回っていますが、元の投稿に国籍は書かれていません。参考までに、岡崎市の外国人住民は令和7年4月時点で14,602人、人口の3.83%。上位はブラジル・ベトナム・フィリピン・中国で、この4か国で約73%を占めます。憶測で特定の国を名指しするのは、事実としても間違いです。
→ 要点:論点は国籍ではなく行為です。誰がやってもダメ、で通すのが平等です。
窓口が複雑すぎる。こういう時こそ、市議を使ってください
ここからが、今日いちばん伝えたいことです。
上の表を見て、正直こう思いませんでしたか。
「川の名前で管理者が変わるとか、そんなの市民が覚えてられるか」
自分もそう思います。この仕組み、市民が把握している前提のほうがおかしいです。
市民からすれば、住んでいるのは岡崎市です。国だろうが県だろうが関係ありません。目の前の川が汚れている、それだけの話です。
なので、窓口がわからないときは、市議に投げてください
自分自身、矢作川の件で市に相談したうえで、国土交通省中部地方整備局 豊橋河川事務所の出張所に対応していただいたことがあります。市の管轄外でも、横のつながりで適切な機関につなぐことはできます。↓(事例です。:無所属の市議ですが、国の機関も適切に動いてくださいます)

そして自分だけではありません。大半の市議会議員は、「それは国です」「それは県です」で会話を終わらせません。どこに言えば動くのかを調べて、つなぐ。それが仕事だからです。
議員に相談するのに、支持者である必要も、選挙で入れてくれた必要もありません。
→ 要点:管轄探しは市民の仕事ではありません。迷ったら議員に投げてください。
冷静に問題を切り分ける
今回、市役所の職員が「うちではできない」と答えたこと自体は、管轄の説明としては事実に近い可能性が高いです。乙川も伊賀川も男川も、市の管理ではないからです。
問題は、説明の仕方です。
この件は、議会でも取り上げる価値のあるテーマだと思っています。河川に限らず、「管轄外」で会話が終わる窓口運用を変えられないか。あわせて、水辺の多言語看板や、外国人住民向け生活ルール講座に「川・水路」の項目を入れられないか。ここは調べて、必要なら問います。
→ 要点:叩くべきは職員個人ではなく、たらい回しが起きる仕組みのほうです。
最後に
川で泡が流れていくのを見て、悲しくなる。その感覚は、まっとうだと思います。声を上げた方は、何も間違っていません。
ただ、その怒りが「誰が悪いか探し」に流れてしまうと、川はきれいになりません。行為をやめてもらうこと、次に同じことが起きない仕組みを作ること。動かすべきはそこだと思っています。
そして、もし今度困ったら、窓口を自分で探さなくて大丈夫です。「川が汚れてる、どこに言えばいい?」だけで結構ですので、公式LINEからでも投げてください。
岡崎の川は、岡崎の子どもたちが遊ぶ場所で、自分たちが飲む水の上流です。そこは守っていきます。



